追悼キングカメハメハ

ディープが召されたばかりだというのに、土曜日はまた悲しいニュースが飛び込んできました。

キングカメハメハ、永眠

風の噂で「状態が思わしくない」というのは聞いていたので、衝撃はディープインパクトの時ほどではありませんが、それでも僕が一番競馬にハマっていたと言ってもいい時代の名馬が亡くなるのはショックです。

僕にダービーを勝つ馬のイメージを教えてくれた

実は僕、ディープインパクトとは違って、デビュー当初の頃はキングカメハメハの事をそれほど評価していなかった。

「持ち込み馬で、松田国英調教師が絶賛している馬がいる。」という噂は聞いていたが、デビュー3戦のレースぶりを見てもそこまで強いという印象は受けず、むしろ「典型的な人気先行タイプ」と感じていた。

迎えた4戦目のすみれS。キングカメハメハは4角馬なりで先頭に立つと、持ったままで直線を向き、残り1Fで気合をつけるとあっさりと後続を突き放す完勝。まさに「強者の競馬」というレースぶりで、僕はこの馬の評価を改めることになった。

これは何も僕の見る目がないとかそういう話ではない。いや、見る目がないのは確かだが、これに関しては違う。明らかに「キングカメハメハ」という馬自体が変わったのだ。

これに関しては、主戦騎手だった安藤勝己騎手も新馬戦からのいい意味での印象変化を語っておられるので間違いないと思う。

この「成長力」こそがキングカメハメハ最大の武器であったと思うし、ダービー馬のダービー馬たる所以だと思う。

後年、僕はディープスカイ、オルフェーヴル、キズナ等「それまでの頼りなさが嘘のように、3歳春に一段強くなってダービーを勝つ」という馬を見るたびにキングカメハメハの事を思い出したし、その度に「あぁ、これがダービーを勝つ馬の底力、成長力なんだな」と再認識させられた。

「ダービーを勝つ馬というのはこういう馬だよ」というのをキングカメハメハは僕に教えてくれた気がします。

もしかしたらキングカメハメハのダービーこそが「最強のダービー」かもしれない

そのダービー。もしかしたらこのダービーこそが「最強のダービー」なのかもしれないとふと思った。

何しろメンバーが凄い。皐月賞馬ダイワメジャーに地方の雄コスモバルク。後に1歳下の三冠馬を初めて負かすことになるハーツクライに後に天皇賞馬となるスズカマンボ。他にもハイアーゲームやコスモサンビームなども名を連ね、個性豊かなビッグネームが居並ぶ。

レース自体も凄かった。

最内1枠1番から先手を取ったマイネルマクロスが果敢に大逃げを打つ。1000m通過タイムが57.6。今の馬場でもかなりのハイペースと言える流れで引っ張る。

3角手前。流石にペースが落ちてくる。普通ならここで後続集団はマイネルマクロスがバテるのを待って直線勝負にかけるのが定石だ。しかし、3角に差し掛かるや否や早めにマイネルマクロスを捕まえに行く馬がいた。2番人気のコスモバルクだ。

この仕掛けは明らかに早すぎるものだったが、後続への影響は多少あったのだろう。緩みかけたペースはさらに激流へと押し戻される。4角手前キングカメハメハは既に3番手。先頭に立ったコスモバルクを射程圏に入れていた。

直線。各馬死力を出し尽くしたのが傍目でもわかる脚運びになっていく中、キングカメハメハは堂々と馬場の真ん中を抜け出していく。

その様は、宮廷で椅子に座り、従者を従えている「王様」のイメージではない。自ら戦場に立ち、敵をバッタバッタとなぎ倒していく「大王」のイメージだった。

キングカメハメハは12番緑の帽子

繋がっていくキングカメハメハの血

このキングカメハメハの重厚感は産駒にも十分に伝わっている。

中長距離の強豪だけでなく、世界の短距離王となったロードカナロア、ダートG1を勝ちまくったホッコータルマエなど、多士済々な個性を持つ産駒、その子孫たちはこれからも日本競馬を席巻していくだろう。

ありがとう!キングカメハメハ!

そして、安らかに。

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