眠れぬ夜を超えて~2008年スプリンターズS~

こんちわ~す。館山速人で~す。

アシスタントの大澄晴香です。いよいよ今週末は秋のG1開幕戦、スプリンターズSですね。

そうだね。個人的にはある1頭の人気馬を切ってやろうと内心思っているよ。

そうですか。じゃあ私はその切った人気馬から買わせて頂きますね。

なんでやねん!( `ー´)ノ

まぁ、スプリンターズSの予想は週末にやるとして、今日はG1週恒例の「思い出のG1」シリーズを書いていくよ。

今回紹介するのはどの年のスプリンターズSですか?

うん。今回は2008年、

スリープレスナイト

が勝ったスプリンターズSを紹介していくよ。

華々しいデビューから苦しい日々へ

ところで晴香ちゃんは上村洋行というジョッキーを知ってるかい?

先週紹介したマチカネフクキタルの神戸新聞杯で、サイレンススズカに騎乗していた騎手ですよね。そのレースでは余力残しで勝とうと手綱を緩めてしまったためにゴール前差されてしまって……、

なんでそこだけ詳しく知ってるんだよ(;´Д`)

もう少し詳しく説明すると、上村洋行騎手は1992年の騎手デビュー年から重賞を勝ち、3年目の1994年にはダービーで2番人気馬(ナムラコクオー)に騎乗するなど、若手のホープとして期待を集めていたジョッキーだったんだ。

ただ、そのナムラコクオーが故障がちで順調に使えなかったり、晴香ちゃんがさっき言った神戸新聞杯が原因でサイレンススズカを降ろされたり、何と言うか、「もうひとつ殻を破りきれない」という状況が続いていたんだ。

なんかありがちですよね。「神童も二十過ぎればただの人」みたいな感じで。

それには一つ理由があって、上村騎手は90年代後半から「飛蚊症」という病に悩まされていたんだ。

あぁ、視界に常に蚊が飛んでるような影が見えるって言う病気ですよね。

上村騎手はその飛蚊症の症状が出ていたけど、しっかりとした治療をせず乗り続けていた。それでも年間20勝前後はしていたんだけど、1998年のスワンS以降重賞勝利からは遠ざかったんだ。

2004年、上村騎手は一大決心をする。騎乗をしばらく休み、飛蚊症を直す手術をすることにしたんだ。

目の手術って何となく怖いですもんね。

ましてや騎手だからね、視力の低下は騎手生命を脅かすことにもつながりかねない。我々が思う以上にこの手術を受けるには勇気がいったと思うよ。

運命の出会い

復帰後は、2005年に42勝を挙げ、再び乗り馬にも恵まれだした。

特に彼の運命を大きく変えたのが橋口弘次郎厩舎とのつながりが出来た事だった。それまではほぼ付き合いのない関係だったけど、2005年の高松宮記念で1600万(現3勝クラス)を勝ったばかりのクリノワールドに騎乗し、9着になって以降、橋口厩舎の馬に乗る頻度が増えていく。

そのうち志願して橋口厩舎の調教も手伝うようになり、乗り数はさらに増えていく。そんな中出会ったのがスリープレスナイトだったんだ。

スリープレスナイトって変わった名前ですね。「3つの押す夜」ってどういう意味でしょう?

………、晴香ちゃん切るところが違うよ。スリー/プレス/ナイトじゃなくて、スリープ(/)レス/ナイト!「眠れない夜」って意味ね。

あぁ、そうか。(*ノωノ)「スタッドレスタイヤ」みたいなことですね。

………。その例えがイマイチわかんないけど、この名前は父クロフネからの連想で

泰平の眠りを覚ますじょうきせん たった四杯で夜も眠れず

という江戸時代の狂歌から来ているんだ。

………。それ、どういう意味ですか?

まったく、学のない子はこれだから。┐(-。ー;)┌

………。先ほど「館山さんの『消す馬』を買う」と言ったことは謝りますから教えてください。

この狂歌は黒船がやってきた当時の幕府の対応を揶揄したもので「じょうきせん」というのはお茶の銘柄である「(上)喜撰」と「蒸気船」を引っかけている。

お茶を飲みすぎると(この場合四杯)眠れなくなるだろう、それとたった四杯の蒸気船(黒船)の対応に眠れないほど慌てふためいている幕府を皮肉った歌だね。

なるほど、だから「スリープレスナイト」なんですね。

スリープレスナイトに上村騎手が初めて騎乗した時は4戦1勝と500万(現1勝クラス)の条件馬だったんだけど、上村騎手が乗って500万、1000万(現2勝クラス)、1600万と、いずれもダート1200mで3連勝。

その後4戦は勝ちに恵まれなかったんだけど、横山典弘騎手が代打騎乗して勝った京葉S以降は、再度勢いに乗り、上村騎手に手が戻った栗東Sを快勝。横山典弘騎手の進言もあって芝のCBC賞を使うとそこも鮮やかに勝利すると、北九州記念、セントウルSと4連勝。ついにG1スプリンターズSに出走することになる。

涙のG1初制覇

14番オレンジの帽子がスリープレスナイト

レースは好スタートから好位のポジションにつけると、直線は悠々と外を抜け出す、正に「横綱相撲」で快勝。上村騎手にとっては悲願の初G1勝利となった。

この時のテレビ向け勝利騎手インタビューで上村騎手は人目もはばからず泣いていた。

病気で手術をすると決まった時から、ここに来るまでの間、不安や焦りでそれこそ「眠れない夜」を過ごしていたことは想像に難くない。その涙を見ると、やっぱりこっちまでウルッときちゃうよね。

今年の秋のG1もこんなドラマがたくさん見れたら良いな。

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