牝馬三冠挑戦物語~ジェンティルドンナ編~
こんちわ~す。館山速人で~す。
アシスタントの大澄晴香です。今日は短期集中連載「三冠挑戦物語」の第2回です。今日紹介するのはどの馬でしょうか?
今日は2012年に牝馬三冠を達成した
ジェンティルドンナ
を紹介するよ。
この名牝も比較的記憶に新しい馬ですね。
俺っちもこの馬には良い思いもさせてもらったし、逆に苦汁を飲まされたこともあった懐かしい馬だよ。
それでは早速本題に入っていきましょう。
クラシック前
ジェンティルドンナは今でこそ歴史的名牝として語り継がれているけれども、クラシック前まではそこまで圧倒的な評価を受けていたわけじゃなかったんだ。むしろ、「今年の牝馬クラシックはこの馬で決まり」と思われていたのがジョワドヴィーヴル。
噛みそうな名前の馬ですね。
大〇元雄さんなら絶対言えないだろうね(;^_^A。
この馬は父がディープインパクト、母が阪神3歳牝馬Sを勝ったビワハイジで姉にG1・6勝の名牝ブエナビスタがいる超良血馬。新馬戦を勝った後、キャリア1戦の身で阪神ジュベナイルフィリーズに出走すると、直線外から姉譲りの鋭い末脚を披露して2馬身半差の快勝。誰もが、「あっ、来年のクラシックはこの馬で決まり」と思っていたんだ。
へぇ~。
しかし、前哨戦のチューリップ賞で情勢が微妙に変化する。当時絶対的と思われていたジョワドヴィーヴルとその時はシンザン記念を勝って新興勢力として名を上げていたジェンティルドンナが伏兵ハナズゴールに敗れてそれぞれ3着、4着と敗退。ジョワドヴィーヴル優勢の評価は変わらなかったけど、予想より差はないんじゃないかとみんなが思いはじめたって感じだったね。
桜花賞・オークス
そうして迎えた桜花賞は1番人気が引き続きジョワドヴィーヴル、2番人気がジェンティルドンナ。
ジェンティルドンナは2番人気だったんですね。館山さんの本命はどの馬だったんですか?
この時の俺っちは「アグネスタキオン産駒の有力馬が出てきたら無条件で本命にする」くらいの気持ちでいたからサウンドオブハートと言う馬を本命にしていたよ。紅梅Sの勝ち方も強かったしね。
レースは直線、フィリーズレビュー勝ち馬のアイムユアーズ、クイーンC勝ち馬のヴィルシーナとの叩き合いを制し、ジェンティルドンナが優勝。見事桜の女王に輝いた。
で、これで完全にジェンティルドンナがこのクラシックの中心になったと。
実はそうでもないんだよ。ジェンティルドンナのオークスは単勝3番人気だったからね。
えっ!そうなんですか?なんでまた。
考えられる理由は2つあって、ひとつは血統的に2400mと言う距離が不安視されたこと。この時はちょうど姉のドナウブルーがマイル路線で頭角を現してきた時期で「この馬も本質的にはマイラーなのでは?」と考えられていた。
もうひとつは乗り替わり。ちょうどオークスの2週間前に行われたNHKマイルカップで主戦の岩田康誠騎手が騎乗停止を食らって、本番では川田将雅騎手に乗り替わりになったんだよ。
なるほどぉ~。でジェンティルドンナより上の評価をされた馬はどんな馬だったんですか?
一頭は桜花賞2着のヴィルシーナ。この馬の場合前年に2000mのエリカ賞で牡馬相手に勝っていたから「距離が延びればこの馬」と元々思われていたのが大きかった。
で、1番人気がミッドサマーフェア!
初めて聞く名前ですね。
この馬は500万クラスの君子蘭賞、トライアルのフローラSと連勝でオークスに駒を進めてきた馬。その君子蘭賞の差しきりが鮮やかでねぇ~。実のところ、俺っちのオークスの本命はこの馬だった。
へぇ~。そうなんですね。
もっと言うと俺っちはこの時”穴を狙うつもりで”ミッドサマーフェアを本命にしてたんだ。そしたら当日1番人気と来たもんだ!本当に「(・。・)」←こんな感じの顔になったのを覚えてるよ。
ジョワドヴィーヴルとサウンドオブハートはどうだったんですか?
確かどちらもケガで戦線離脱。オークスには出られなかったんだよ。
この年のオークスは前半1000m通過タイムが59.1。2400mにしてはそれなりのハイペースなんだけど、そこから最後の直線、つまり残り600mまでのハロンタイムが11.9-12.4-12.3-12.2と中盤ほとんど緩まずに底力が問われる流れになった。それを後方待機の競馬をしていたとはいえラスト3F12.1-11.8-11.8で5馬身突き抜けたジェンティルドンナの勝ち方は衝撃だった。この時の勝ちタイムは翌週行われたダービーの勝ちタイムより速く、「あぁ、コイツも化け物じみた馬だったか」と思ったよ。これのおかげでこの年のジャパンカップ、ジェンティルドンナを本命にして当てることが出来たんだけど、それはまた別のお話。
サラリと自慢を入れてきますね。で、肝心のこのレースはどうだったんですか?ミッドサマーフェア。上位争いに絡んでいたようには見えなかったんですけど……。
バキッと13着!
どこが「バキッと」なんですか( `ー´)ノ!
で覚えてるのがこのレース終わった後某大手競馬サイトの掲示板を覗いてみたんだよ。そしたら「ミッドサマーフェアを買う養分乙www」とか書いてあって泣きそうになったよ(´;ω;`)。
まぁ、たまにはそんなこともありますよね。
まっ、この借りは今週末ミッドサマーフェアの妹に返してもらう予定だけどね!
三冠のかかる秋華賞
秋になってもジェンティルドンナの勢いは止まらず、前哨戦のローズSを快勝。三冠に向けて死角なしと思われた。
その最大の障壁とされたのが桜花賞、オークス、ローズS全てのレースでジェンティルドンナの2着に屈したヴィルシーナ。打倒ジェンティルドンナに向けての思いが強かったことは想像に難くない。
ジェンティルドンナが三冠を達成するのか?それともヴィルシーナが念願の打倒ジェンティルドンナ、悲願のG1制覇を達成するのかがレースの焦点だった。
レースはクラシックでが好位あるいは中段からの競馬に徹してきたヴィルシーナが逃げる形。1000m通過タイムが1.02.2とかなりのスローだから内心内田博幸騎手は「シメシメ」と思ったんじゃないかなぁ。
ただ、このスローペースに業を煮やしたのか、向こう正面でそれまでシンガリにいたチェリーメドゥーサが一気にまくって先頭を奪う。
ずいぶん思い切った騎乗ですね。
小牧騎手一世一代の騎乗と言ってもいいかもしれないね。3コーナーでは大逃げの形になって4コーナー、残り200mになってもセーフティーリードに見えて「これもしかしたらこのままいってしまうんじゃ……。」と誰もが思ったし、小牧騎手自身も「あかん、優勝してまう」と思ったらしい。
でもそこから200mがG1の厳しさ、三冠にかける馬と最後の一冠にかける馬の意地。ジェンティルドンナとヴィルシーナがそれぞれ叩き合いながら猛追。チェリーメドゥーサを捕らえると激しいデッドヒートを繰り広げながら並んでゴール。最後は僅かハナ差だけジェンティルドンナの三冠にかける意地が前に出ていた。
壮絶なレースでしたね。
そうだね。三冠のかかる最後の一戦がここまで白熱のデッドヒートと言うのはそうそうないんじゃないかなぁ。
その後
ジェンティルドンナはその後牝馬同士だけでなく牡馬とも渡り合える一流馬として名を馳せた。オルフェーヴルとの叩き合いに勝ったジャパンカップやラストランを飾った有馬記念は印象深いね。
ライバルだったヴィルシーナもヴィクトリアマイルで初めてのG1タイトルを獲得すると、一時の不振を乗り越え翌年のヴィクトリアマイルも制覇。長きにわたって競馬会を盛り上げたよね。
今年のデアリングタクトには今のところ「ライバル」と呼べる馬はいなさそうですね。
そうだね。もちろん強敵はたくさんいるだろうけど、何か「因縁めいたもの」を感じさせる相手はいないかなぁ~。今回のレースで誕生するかもしれないけどね。