【ウマ娘】不器用セレブ~キングヘイロー~【史実馬紹介】

こんちわ~す。館山速人で~す。

アシスタントの大澄晴香です。
今日も「ウマ娘 プリティーダービー」に関連したブログですか?

そうだね。
せっかく競馬開催日でもないのにTwitterのトレンド欄に競走馬の名前が並ぶなんてそうそうないチャンスだからね。
これを機に「ウマ娘 プリティーダービー」をプレーしてる人たちに競馬について知ってもらいたいからね。

そうすれば馬券の売り上げも上がって競馬界の未来も明るいですからね。

うーん。馬券については二の次でいいかなと個人的には思ってる。
ぶっちゃけ、まずは「ウマ娘 プリティーダービー」をより楽しむために競馬の事をもっと知ってほしいかな。このゲームは競馬を知らなくても十分に楽しめるゲームだけど、競馬を知っていればより楽しめる要素がたくさんある。
だからこのブログではそういう要素を紹介して、それで「うわぁ、競馬って面白そう」って思えた人は、土日の競馬中継を見てもらえればいいかなって思う。

だから、今回は「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するウマ娘のモデルとなった史実馬を紹介していくことにするよ。

なるほど、確かに育成するウマ娘の元となっている馬を知っていると、小ネタに気付けたり、ストーリーに感情移入しやすくなったりしますからね。

それでは、今日紹介していただける馬はどの馬でしょう?

今日紹介するのは、ゲーム内随一の難易度を誇るとも言われるウマ娘
キングヘイロー
を紹介するよ。
元になった馬は、今週末に行われるG1高松宮記念に勝利しているからタイミング的にもバッチリだしね(`・ω・´)b。

プロフィール

キングヘイロー

父ダンシングブレーヴ

母グッバイヘイロー

通算成績:27戦6勝

主な勝ち鞍:高松宮記念(G1)

日本競馬史上でも類を見ない世界的良血馬

キングヘイローと言えばアプリ内では「やたらと一流にこだわる高飛車なお嬢様」と言う印象ですが。

このキャラ設定に関しては俺っちの中では割としっくりくるキャラ設定かな。
何せ、現実のキングヘイローは日本競馬史上類を見ないほどの世界的良血馬だからね。

父のダンシングブレーヴは「80年代ヨーロッパ最強馬」と言われる馬で、1986年にヨーロッパ3大レースと言えるイギリスダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、凱旋門賞を全て勝ち、通算でG1・4勝をあげた名馬。

母のグッバイヘイローはアメリカの牝馬最高峰のレースのひとつケンタッキーオークスをはじめ、G17勝をあげたアメリカの国民的名牝。

欧米それぞれの名馬を配合した、まさしく夢の血統と言える馬だね。

でも館山さん。そんな欧米の歴史的名馬同士の配合がなぜ日本で実現したんですか?

まず、彼らが輸入された当時は日本もバブルで景気が良かったと言うのがあげられるだろうね。

実際、グッバイヘイローは1990年のセールで協和牧場が210万ドル(当時のレート?知らん!)で落札している。

その反響は大きかったようで、アメリカの名門競馬雑誌「ブラッド・ホース」で「SAYONARA Goodbye Halo」と言う特集記事が組まれるほどだったそうだよ。

また、ダンシングブレーヴについては、マリー病と呼ばれる治療が難しい奇病を患っていたこと、初年度の産駒が期待ほど走らなかったことが要因としてあげられるだろうね。
まぁ、この話には続きがあって、輸入された後ヨーロッパ競馬では残してきたダンシングブレーヴ産駒が大活躍して「ダンシングブレーヴの輸出は国家的損失だった」とまで言われるようになるんだけどね。

なるほど「運命の歯車」が上手く組み合わさったって感じですね。

陳腐な表現だけどそんなところじゃないかなぁ。

悪かったですね、陳腐な表現で( `ー´)ノ。

いかにもお坊ちゃまと言うワガママな面も?

そういう血統だからゲーム内ではあぁいう高慢ちきな感じになったんですかね。

高慢ちきって……、今日日そんな言葉聞かんぞ……。
まぁ、でもこれに関しては血統だけじゃなくキングヘイローのレースぶりも大きく関係していると思う。

何と言うか、キングヘイローのレースぶりって
「行く気になる時は『やり過ぎ』ってくらい行く気になったりするのに、それをなだめると今度はまるっきり走る気をなくす」って言うイメージなんだよね。

あぁ、「ほどほどに走る」が難しいタイプですね。

そうそうそんな感じ。
それが如実に表れたのが日本ダービー。

この時、キングヘイローに騎乗していたのは当時弱冠21歳だった福永祐一騎手。
当時の福永騎手は初のダービー、しかもスペシャルウィークに次ぐ2番人気の馬に騎乗すると言う事で極度の緊張状態に陥っていたらしい。

皐月賞馬のセイウンスカイよりも人気があったんですね。

当時の下馬評では、直線の長い東京コースになれば、逃げ馬のセイウンスカイより末脚に優れたスペシャルウィーク、キングヘイローの方が上だろうと言う見方が大勢だったんだよ。

話をレースに戻すと、スタート直後、福永騎手は内枠だったこともあり、良いポジションを取ろうとしてか、ほぼ無意識的にキングヘイローをやや促しながら走らせたそう。
すると、キングヘイローのスイッチが入ってしまい今まで一度も試したことのない「逃げ」と言う形でレースを進めてしまう。

終始力んで走ったキングヘイローは、最後の直線手前で力を使い果たしてしまい、ラストスパートの余力は残っていなかった。
この時になってようやく福永騎手は我にかえることが出来たそう。

人気馬での暴走という失態を犯してしまい、福永騎手は
「とんでもないことをしてしまった」
と泣きそうになりながら直線は追っていたと当時を振り返ってるよ。

「失態」とはまた辛辣ですね。

このレースは福永騎手が後年まで「印象に残るレース」として度々インタビューなどで語っているように、本人にとっても悔恨が大きく残るレースであることは明白。
と言うか、当時の福永騎手の心情を俺っちがこうやって書けるのも、福永騎手本人がメディアで語っているからこそで、それを「あの騎乗は悪い騎乗じゃない」ってフォローするのもなんか違うと思ってね。

ともかく、このダービーでも見られたキングヘイローの「一度火がつくと簡単に止められない」走りは、中長距離では致命的な欠点とも言え、次第に主戦場を短い距離に移していくことになったんだ。

なかなか勝てない日々…。それでも陣営は諦めなかった。

「ウマ娘プリティーダービー」では、尺の都合上菊花賞に挑戦した翌年には高松宮記念に挑戦しているけど、実際のキングヘイローが高松宮記念を制するのはもう1年後。
つまり、マイル~短距離路線に転向してからもG1で結果が出ない日々が続いたんだ。

やっぱりそれも気性的なものが原因ですか?

うーん、まぁいろいろあるだろうけどねぇ…。
東京新聞杯→中山記念と連勝で挑んだ安田記念は2番人気で11着に惨敗してるし、これは精神的なものだろうけど、その年のマイルCS2着は安田記念でグラスワンダーに土をつけたエアジハードと言う名マイラーがいたと言うのもある。
その次のスプリンターズSは直線凄い脚で追い込んで3着だったんだけど、この「脚を余した感」を見るとやっぱり本質的には短距離の馬じゃないのかなって思ったり。

アプリのキングヘイローは、負けても負けても
世間に、そして母に認められるまでは決してあきらめないキングヘイローの姿が描かれています。

馬自身がどう思っていたかはさておき、陣営の「この馬にG1を獲らせたい」と言う思いは並々ならぬものがあったと思う。
ついには芝ではなくダートにも舵を切ったくらいだからね。

結果はどうだったんですか?

初ダートでしかも内枠を引いたから、砂をかぶって嫌気がさして13着惨敗。

あちゃー。

これがもとでアプリで
「キングヘイローが風で舞った砂ぼこりを嫌がってやる気が下がる」ってイベントが追加されたんだろうね。

余談だけど俺っちがこの記事を書くにあたって改めてアプリでキングヘイローを育成した時、そのネガティブイベントを3ターン連続で引いてブチギレそうになったよ。

それはさすがに引き悪すぎでしょ。

首を下げなかったから勝てたG1は、首を下げていれば簡単に勝てたG1?

そして迎えた11度目のG1高松宮記念。
ここでついにキングヘイローは念願のG1制覇を達成する。

このレースぶりは、道中の追走の段階から騎手が押しながら進んでいき、直線やっとエンジンがかかって大外一気に差し切ると言うもので、とても短距離で安定して成績を残せるようなレースぶりではないと俺っちは今でも思ってる。

それでも「自分が行きたいときに行かないとやる気をなくす」この馬にとっては、集中力の持続時間が短くてすむ短距離は合っていたんだろうなと思う。

苦労を重ねたお坊ちゃんがやっと報われた瞬間ですね。

馬自身がどう思っているかわからないけど、レース後キングヘイローが引き上げてくるときに、調教師である坂口正大氏が涙を流しながら喜んでらっしゃったのが俺っちにはとても印象的で、それを思うとキングヘイローの事を「不屈の名馬」と呼んでも差し支えないと思うよ。

だからこそ、2012年に放映された「The Winner」というJRAプロモーションで、キングヘイローはこんな風に紹介された。

2000年 高松宮記念
その馬は、10度の敗北を超えて、血統を証明した。
敗れても、敗れても、敗れても、絶対に首を下げなかった。
緑のメンコ(※)。不屈の塊。その馬の名は、キングヘイロー。

メンコ…馬が調教やレースの時に被る覆面のようなもの。耳をふさいでいるものが多く、雑音を少なくすることで走りに集中させる効果がある。

負けても負けても、決して首を下げて諦めることなく前を向き続けてG1に挑んできたことを表してるんですね。
いいフレーズじゃないですか。

うん。もちろんそういう意味もあるんだけど、この「首を下げなかった」ってのはもう一つ意味がある。

と言うのも映像を見て気づいた人もいると思うんだけど、キングヘイローの走りって他の馬に比べて重心が高く、首を使わない走りなんだ。

なるほど、そういう「首を下げない走り」と言うニュアンスも含まれていたんですね。

そういう事。
俺っち個人としては首が低くて沈み込むような走りの方が好みで、キングヘイローもそういうフォームならもっと勝てたんじゃないかと思う部分もあるんだけど、そういう「自分を貫き通した」と言う意味も、このフレーズには含まれている気がするよ。

キングヘイローは「器用貧乏」ならぬ「不器用セレブ」⁉

キングヘイローは1200mの高松宮記念から3000mの菊花賞まで走っているために、アプリでも目標レースの距離幅が広く「育成が難しい」と話題になっていますね。

それでも、ぶっちゃけ
菊花賞5着以内
フェブラリーS出走
有馬記念1着
とか言う目標が設定されないだけ良心的とも言えるけどね。

実際、キングヘイローは菊花賞5着、フェブラリーSにも出走し、ラストランとなった有馬記念でも4着に来ていますしね。
そういう目標になったとしても不思議はありません。

そんなウマ娘ユーザーが悲鳴を上げるようなミッションを、キングヘイローはこなしてきたわけだからね。

まさしく、「オールラウンダー」って感じですね。

うーん。それはなんとなくキングヘイローのイメージじゃないんだよなぁ。

と言いますと?

「オールラウンダー」と言うと、得てして「器用貧乏」と言うイメージも付きまとうじゃない。
それぞれの距離で器用に立ち回って力は出し切れるけど、その分どの分野でトップに立てるわけではない感じ。

でも、キングヘイローに関しては「それぞれの距離で器用で立ち回っている」と言うよりも、「どの距離でも器用に競馬できなかったけど、持っているポテンシャルと根性だけで何とかしてきた」って言うイメージなんだよね。

そこいくと、キングヘイローを表す言葉としては「器用貧乏」と言うより「不器用セレブ」という言葉の方がしっくりくる( -`ω-)。

その「上手いこと言ってやったぜ」って言うドヤ顔が腹立たしいですね。

でも実際、アプリのキングヘイローを見ても、お母さんやトレーナーに対して素直になれない一面は「不器用セレブ」と言う言葉がふさわしんじゃないかなぁ。

キングヘイローはスペシャルウィークに勝てたのか?

館山さんはキングヘイローの事を「不器用セレブ」と仰いましたが、もしキングヘイローに器用さがあったら、スペシャルウィークに勝てたと思いますか?
例えば、今の福永祐一騎手で日本ダービーに挑戦したりとかしたら。

どうだろ。今の技術の福永祐一騎手が乗って完璧に立ち回ったとしても、あの時のスペシャルウィークは本当に強かったからね。もしかしたら勝つのは難しかったかもしれない。

でも、間違いなくポテンシャルに関してはスペシャルウィークやセイウンスカイ、グラスワンダーにエルコンドルパサーがいる「黄金世代」と言われる世代の中でも、決して彼らに引けを取るものではなかったと思うし、展開次第では彼らを負かしてG1を勝つことも十分に出来たと思ってる。

アプリでは育成ウマ娘にそれぞれ個別の称号が合って条件を満たすとその条件がもらえるんだけど、キングヘイローの個別称号「世代のキング」の取得条件は以下のようになっている。

  1. 継承元2人のG1勝利数合計11勝
  2. スペシャルウィーク、セイウンスカイ、グラスワンダー、エルコンドルパサーにそれぞれ3回以上勝利する。

ハッキリ言って簡単に得られる称号ではないけれど、実際キングヘイローにはこれを成し遂げるくらいのポテンシャルはあったと思う。

ウマ娘、実馬のどちらかを問わず、キングヘイローファンの方はそのポテンシャルを証明するために、キングヘイローのように何度も何度も挑戦する勝ちのある称号だと思うよ。