【ウマ娘】俺っちが最も愛した馬~アグネスタキオン~【名馬物語】

こんちわ~す。館山速人で~す。

アシスタントの大澄晴香です。
今日も今日とて競馬の話。
今日は今巷で最も話題のスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するキャラクターの中からモデルとなった馬を紹介する「名馬物語」のブログです。
今日紹介していただくのはどの馬でしょう。

今日は満を持して、最も愛した馬
アグネスタキオン
を紹介するよ。

確かに予想ブログでも「母父アグネスタキオンだから」と言う理由だけで評価を5割増しにされることよくありますもんね(予想ブログとしてはどうなんだって話ですが)。
それにしては書くのが遅くないですか?もうすぐこのブログが始まって2年ですよ。

ぶっちゃけ好き過ぎるあまり
「良いものを書かなくちゃいけない」
って考えが強くなって
「もっと文章が上手く書けるようになってから書こう」
と思ってなかなか書かなかった。

でも、せっかく「ウマ娘」のおかげでアグネスタキオンが注目されている今、この機会に書かないと損だと思ったから今回書くことにした。
ブログなら上手く書けなくてもまた修正すればいいしね。

それだけ館山さんにとって思い入れがあるんですね。アグネスタキオンは。

そうだね。
だから今回は今「ウマ娘」界隈で流行っている「怪文書」的なものでも、ましてや大泉洋要素のある記事でもなく、まじめな文章を書くからそのつもりでね。

「怪文書」とか「大泉洋」とかなぜかアグネスタキオンのサジェスロに最近見られるワードをちゃっかり入れてくるあたりSEO対策はするんですね。

やっぱり多くの人に見てもらいたいからね。

プロフィール

アグネスタキオン

父サンデーサイレンス

母アグネスフローラ

通算成績:4戦4勝

主な勝ち鞍:皐月賞(G1)

超光速の名をつけられたオーナーゆかりの良血馬

ところで館山さん。アグネスタキオンはウマ娘では「トレーナーをもモルモットとして扱う研究者」と言う異色のキャラ付けをされているんですが、これには何か由来があるんでしょうか?

それはおそらく馬名からの連想なんだろうね。
「タキオン」と言うのはアグネスタキオンをホーム画面に設定すると本人が教えてくれる通り、「超光速の粒子」と言う意味の物理学用語。そこから「物理学→理系」と言うイメージをしたんだろうね。

「超光速」と言う事は光よりも速いということですよね。
偉く大層な名前を付けられたんですね。

そりゃそうだよ。
アグネスタキオンは祖母のアグネスレディーがオークスを、母のアグネスフローラが桜花賞を制し、一つ上の兄アグネスフライトもエアシャカールとのハナ差の争いを制したダービー馬。全て渡辺孝男氏の所有馬で、オーナーゆかりの超良血馬だからね。

祖母、母、兄がG1ホース。それは期待値も大きくなりますよね。

それだけじゃない。
兄のアグネスフライトがダービーを勝った時、取材を受けた育成に携わっている牧場関係者の方が「弟(アグネスタキオン)はもっとすごいですよ」と言っていたそうだから、血統だけじゃなく馬体や育成段階での動きも良かったんだろうね。

そうなんですね。
そりゃぁ「超光速粒子」なんて名前も付けたくなりますよね。

ちなみに冠名(競走馬の名字みたいなもの)の「アグネス」は渡辺孝男オーナーの娘さんがアグネス=チャンのファンだったからこの冠にしたそうだよ。

アグネスタキオンの読んでいる本を確認するダイワスカーレット。
全て物理学に関する本と言う「ウマ娘」の芸の細かさを感じられる一コマ(知らんけど)。

アグネスタキオンは「ヒーロー」であり「カリスマ」

凄くカッコいい見出しですね。
館山さんにしては凄くセンスを感じます。

いや、これは俺っちが考えたものじゃなくて競馬雑誌「サラブレ」の「名馬物語」のコーナーでアグネスタキオンが特集された時に使われたフレーズを使わせてもらっただけだよ。

パクっとんのかい( `ー´)ノ。

いやでもこれは俺っちの当時初めてこの馬のレースを見た時の気持ちを、本当に的確に表したフレーズだなぁと思って強く印象に残っているんだ。
何しろ、いままで20年以上色んな新馬戦を見て「これはとんでもない馬が現れたぞ!」と思ったのはアグネスタキオンとディープインパクトの2頭だけだからね。

俺っちの相馬眼なんて、今でも素人に毛が生えた程度だし、当時なんてまだガキンチョがから馬を見る目なんて全くないんだけど、そんな「ズブの素人」と言っても差し支えない人間がレースを見ただけでそれだけの衝撃を受けたんだからそれはもう凄かったよ。

具体的にはどこが凄かったんですか?

加速の良さとトップスピードだね。

アグネスタキオンの出た新馬戦は、
ダービー馬フサイチコンコルドの弟ボーンキング、
僅かキャリア2戦でイギリスダービーを制し「神の馬」とも称されたラムタラの息子メイショウラムセス、
南関東の名牝ロジータ(※1)の息子リブロードキャスト、
第1回セレクトセール(※2)で最高落札価格を記録したアドマイヤセレクトなど垂涎の豪華メンバーが揃っていた。

※1ロジータ…地方の南関東籍を置いた競走馬。牝馬ながら羽田盃、東京ダービー、東京王冠賞の三冠を達成した地方競馬史に残る名牝。

※2セレクトセール…0歳、1歳の馬を売買するセリ市で、競走馬のセリ市としては日本最大の規模を誇る。ディープインパクトをはじめ多くの名馬がこのセールの出身で、ウマ娘に登場する馬の中でもマンハッタンカフェ、ナカヤマフェスタ、トーセンジョーダン、カレンチャン、サトノダイヤモンドなどがこのセール出身。

そんなレースでアグネスタキオンはスタートはのそっと出たものの、3コーナーでは中団に取り付き、外から馬に被せられたタイミングでギアをあげるとグンと加速し一気に先頭に並びかけ、直線残り200mで鞍上の河内洋騎手が促すとさらに加速し3馬身半の差をつけて快勝。上がり3F33.8の豪脚は俺っちのハートに稲妻が走るほど衝撃的だったよ。
まさに「ヒーロー」、「カリスマ」の登場だったよ。

伝説のラジオたんぱ杯3歳S

その次のレースが、今もなお「伝説のG3」として語り継がれるラジオたんぱ杯3歳Sですね。

そうそう。この年のラジオたんぱ杯3歳Sには、アグネスタキオンの他にも2頭の強豪が出走を予定していた。

1頭は2戦連続芝2000mをレコード勝ちした外国産馬クロフネ。もう1頭は札幌3歳Sで後の阪神3歳牝馬Sを制するテイエムオーシャン、朝日杯3歳Sでレース中に骨折しながら2着に入ったタガノテイオーを破ったジャングルポケット。

ジャングルポケットはウマ娘で言うとトーセンジョーダンのお父さん。クロフネはカレンチャンや、この間の桜花賞を制したソダシのお父さんですね。

説明ありがとう。
この説明の通り、2頭とも競走馬としてはもちろん種牡馬としても一流という後の歴史に残る名馬だよ。

確かにそうですね。
でもそれはあくまで結果論。
当時の雰囲気はどうだったんですか?

うーん。今みたいにインターネットも発達していない(発達していたとしても俺っちはガキだったので扱えない)時代だったから、世間的な気持ちは推し量るしかないけど、少なくとも「来年のクラシックに向けて物凄く楽しみなメンバーが揃ったな」とか「もしかして朝日杯よりレベル高いんじゃない」ってことは言われてた気がする。

そんなメンバーだったけど、俺っちは「アグネスタキオンが負けるはずない」と思ってテレビでレースを見てたんだ。

このレース、アグネスタキオンは中団やや後ろの「差し」競馬。ジャングルポケットとクロフネのすぐ後ろにつけた。

3コーナーで、加速力に若干劣るジャングルポケットを置いて、クロフネとアグネスタキオンが外目をさながら「弧線のプロフェッサー(※3)」を持っているかのように捲っていく。

※3弧線のプロフェッサー…ゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するスキル。これが発動するとコーナーでの速度が上がる。

直線は2頭の叩き合いになると思われたけど、コーナーの出口、アグネスタキオンがスパートするとクロフネ他後続を瞬く間に置き去りにしていった。

最終的には2馬身半差。勝ちタイムの2.00.8はちょうど20日前にクロフネが更新した2歳コースレコード2.01.2を上回るタイム。祖母や母、兄をはじめ数多くの名馬に騎乗した河内騎手をして「次元の違う馬だと確信した」と言わしめる強い勝ちっぷり。

俺っちをはじめファンは「来年のクラシックはこの馬で決まり」と確信するどころか、当時破竹の7連勝(翌日の有馬記念で8連勝を達成する)でG1を総なめにしていたテイエムオペラオーを倒すのはこの馬ではないかと言われるほどだった。

ジャングルポケットやクロフネ相手にその勝ち方をしたわけですからね。

このレースはいまだにyoutubeでたまに見るし、見るたびに「このメンバー相手によくこんな勝ち方出来るなぁ」と鳥肌が立つくらいだよ。

荒れ馬場の弥生賞でパワーも示す。しかし……、

年が明け、陣営は当然クラシック3冠を意識する。
今と違ってクラシック前にはひと叩きすることが当たり前だった時代、アグネスタキオンの皐月賞に向けての前哨戦として陣営が選んだのは同じ中山芝2000mで行われる弥生賞。

当時の弥生賞は、皐月賞に向けて権利を獲りたい馬が多数出走していたため、毎年少なくとも13頭程度は出走していたレースだったが、この年は「アグネスタキオンが出走する」と言う理由でこのレースを避ける馬が続出。8頭立てと言う少頭数になった。

ならもうアグネスタキオンに怖いものなしだったんじゃないですか?

いや、実をいうとそうでもない。
と言うのも弥生賞当日は雨の影響による不良馬場。
切れ味とスピードを武器に勝ってきたアグネスタキオンにとって必ずしも向くとは思えない馬場だったんだ。

それに8頭の少頭数と言ってもそのメンバーはクラシック出走のために敢えてアグネスタキオンに挑もうとする骨っぽいメンバー。
新馬戦でアグネスタキオンに敗れた後京成杯を制したボーンキング、同じ年に安田記念とマイルCSを制したマイルの女王ノースフライトの息子ミスキャスト、父であるサンデーサイレンスにそっくりの好馬体が売りの素質馬マンハッタンカフェなど決して楽に勝てるような相手ではなかったし、俺っちもレース前は気が気じゃなかった。

でも、レースが始まると「そんな心配は杞憂だよ」と言わんばかりのレースをアグネスタキオンは見せてくれた。

この日はスタートを決め好位から競馬を進めたアグネスタキオン。グッチャグチャの不良馬場だからその分走るのにパワーがいるためか3コーナー付近ではもう脚が上がっている馬が多数いる中で、彼はそんなこと意に介さずスムーズに脚を伸ばしていった。

過去2戦の素軽い走りではなく、荒れ馬場にも負けない力強い走りで後続を寄せ付けず、終わってみれば2着に5馬身の差をつける圧勝劇。
2着のボーンキングに騎乗していた武豊騎手をして「クラシックもハンデ戦にしないといけないね」と言わしめるほど力の違いを見せつける勝ち方だった。

これまでのスピード能力の高さだけでなく、重馬場をもこなすパワーも見せつけた勝利。
陣営としても「死角なし」と確信する一戦だったんでしょうね。

いや、実はそうでもなかった。
鞍上の河内騎手はこの時あたりから「もっと強い勝ち方が出来る馬のはず」とどこか心に引っかかりがあったそうで、100%満足のいく勝ち方ではなかったらしい。陣営としてもこれだけの荒れ馬場を走った後だから脚元は入念にケアをしていたみたいだよ。

皐月賞を制するものの……、道半ばでの引退

皐月賞は単勝オッズで言うとアグネスタキオンが1.3倍、2番人気のジャングルポケットが3.7倍、3番人気のダンツフレームが16.8倍と完全な2強ムード。

完全な一本被りと言うわけではなかったんですね。

この世代は全体のレベルが高かったからね。
それは致し方ないところだと思う。

レースは出遅れて後方からレースを進めるジャングルポケットに対し、アグネスタキオンは好位から4角先頭に立つ大人の競馬。最後まで後続を完封し、三冠の第一関門を突破した。

上に上がっているのはyoutubeに上がっているJRA公式の映像だから実況はグリーンチャンネルだから割と公平なんだけど、フジテレビの塩原アナの実況では「中山2000m、まずは道を繋ぎました。アグネスタキオンまず一冠!」と言う風に三冠を前提とした言い方をされていたくらい、ハイレベルな世代においても飛びぬけたパフォーマンスを示していたよ。

上記塩原アナの実況は「ウマ娘」でも再現されており、アグネスタキオンの育成において(無敗で?)皐月賞を制するとこの特殊実況を聞くことが出来る。

実況にそこまで言わせるなんて相当ですよね。

ただ、当時の俺っちはこの勝ち方に少々物足りなさを感じたんだよね。
「アグネスタキオンならもっと圧倒的な差をつけて勝てたんじゃないか」って。
今から考えればG1を勝つってそんな簡単なことじゃないし、勝ち方にしたって着差こそ1馬身半(と言ってもこの着差でも十分な着差)なんだけど、詰め寄られたってわけでもなく、手応えに余裕を持たせたままこのリードをキープしていたわけだから内容的にはどこまで行っても逆転できそうにないくらいの完勝だったと今見返せば思うけどね。

それは鞍上の河内騎手も思っていたそう。これに関しては騎手しか感じ取れない感覚的な部分も多分にあるんだろうけど、皐月賞を勝っていながら「本来の走りではない」とコメントしたくらいだからね。

そして河内騎手が抱いた「違和感」は最悪の形で発露する。
世間がゴールデンウィークに沸く5月2日、競走馬にとって「不治の病」と言われる屈腱炎が判明。三冠は断念せざるを得なくなった。

関係者が協議した結果、その年の夏には現役続行を断念。アグネスタキオンは4戦4勝のまま引退し「神話」になってしまった。

館山さんはアグネスタキオンが気がなく順調に行っていれば、三冠を獲れたと思いますか?

もちろん。三冠はおろか、日本馬初の凱旋門賞制覇だって夢じゃなかったと思ってる。
なにせアグネスタキオンが退けた馬たちは、
ジャングルポケットがダービーとジャパンカップを制し、
クロフネがNHKマイルカップとジャパンカップダートと芝ダート両方でG1を制するという快挙を達成、
マンハッタンカフェが菊花賞、有馬記念、天皇賞春と長距離G1を総なめにし、
皐月賞2着のダンツフレームも宝塚記念を勝つなど目覚ましい活躍を遂げた。

そんな馬たちにあっさり勝ってきたアグネスタキオンはぶっちゃけいまだに俺っちの中ではディープインパクトよりも、オルフェーヴルよりも、アーモンドアイよりも強い「日本史上最強馬」だと思っているし、それくらいの可能性を感じさせる本物の「カリスマ」だった。

ウマ娘で体験できる「If」の世界

そんな俺っちが思い描いていた「If」の世界を「ウマ娘 プリティーダービー」では上手に描いてくれている。

特にアグネスタキオンの育成シナリオはその「If」を強く意識させてくれる作りになっていて、三冠を達成した時は本当に嬉しかったし、菊花賞後の伏線回収の時は年甲斐もなく泣いてしまった。

ちなみにどんなシナリオなんです?

それはネタバレになるから言えないよ。
だけど、宙ぶらりんのまま残っていたアグネスタキオンの「夢」をこう言った形で昇華させてくれたウマ娘のシナリオライターさんには感謝しかないよ。

まだウマ娘をプレーしたことない人は是非プレーして見てほしい。
アグネスタキオンはレア度で言えば☆1(この評価は個人的には若干不満なんだけど)だから手に入りやすいし、これはアグネスタキオンに限ったことではないんだけど、競走馬は(特にウマ娘に出てくるほどの馬は)みなドラマチックなバックボーンを持っていたりするから、下手なドラマを見るよりも面白いと思う。

競馬に興味ない人………はこんなブログ見ねぇか。
でも、競馬は好きだけど「ウマ娘は興味ねぇ」って言う人は騙されたと思って一回プレーしてみてほしいし、「ウマ娘」をやっているけど競馬自体はそれほどって人でも競馬はこういったドラマが数多く生まれているから、何となくでいいからしばらく見てみると良いと思う。

内国産種牡馬として51年ぶりのリーディングサイアーを獲得。今もその血は受け継がれていく。

最後にこれだけは言わせてほしいんだけど、アグネスタキオンは引退後種牡馬になるんだけど、種牡馬としても優秀で2008年には日本生まれの内国産種牡馬として51年ぶりのリーディングサイアーを獲得。

ウマ娘にも登場する「ミス・パーフェクト」ダイワスカーレットや、父親の獲れなかった日本ダービーを制したディープスカイ、皐月賞を逃げ切ったキャプテントゥーレなど数々のG1馬を輩出し今もその血を引く競走馬たちが競馬場で躍動している。

もし、「ウマ娘」をやっている人でアグネスタキオンのストーリーに少しでも感銘を受けた人がいたなら、その子孫たちを一緒に応援してほしいな。