(俺は)名馬(だと思う)物語~オーシャンヒーロー~
こんちわ~す。館山速人で~す。
アシスタントの大澄晴香です。
今日は(俺は)名馬(だと思う)物語だよ。
館山さんの独りよがりな個人的趣味につきあうあのコーナーですね。
君、口が悪すぎるだろ。
今日取り上げる馬はどの馬でしょう。
今日取り上げるのは、
オーシャンヒーロー
だよ。
………………。
どうしたの晴香ちゃん。
すみません。失礼ながら、耳に覚えのない馬名だったので。オーシャンヒーローはどんなレース勝ったんですか?
主な勝ち鞍かい?2歳新馬だよ。
………………。あの、では通算成績は?
んっ?5戦1勝だよ。
………………。すみません。一つ疑問なんですが?
なんだい?
その馬、本当に名馬なんですか?
バカ言うな!!
確かに成績だけ見れば、オーシャンヒーローは一介の条件馬に過ぎないよ。
ただ、その新馬戦を見た人の中には、「コイツは間違いなく将来G1を勝つな」と感じる人もいたくらいの内容で、俺っちも「楽しみな馬が出てきたな」とワクワクしたものだよ。少なくとも見てる人に衝撃を与えたデビュー戦だったことは間違いない。
な、なるほど。館山さん、かつてない熱量を感じますね。
俺っちの熱量はいつもこんなもんだよ。
9馬身差ぶっちぎり!!衝撃のデビュー戦
それでは、オーシャンヒーローについて教えてください。
OK。オーシャンヒーローは父スクリーンヒーロー、母エレガントマリー、母の父シャンハイという血統。
父がスクリーンヒーローという点に目が行くくらいで血統的に「良血」という感じではないですね。
そうだね。そのスクリーンヒーローも今でこそ少ない種付け数、決して恵まれているとは言えない繁殖相手の中から、活躍馬をたくさん出して種牡馬としての地位を確立しているけど、当時は期待されているとは言い難い状況だった。
そんな中で迎えたオーシャンヒーローのデビューは京都のマイル戦。そのレースでの戦前の評価は4番人気と決して高いものではなかったんだ。
レースが始まると、好スタートから先手をとると、軽快に逃げて、半マイルの通過タイムは46.3。2歳戦、それも新馬戦でこのペースは結構なハイペース。並の馬なら潰れてもおかしくないペース。
4コーナー、案の定というべきか脱落していく他馬を尻目に、オーシャンヒーローの脚は衰えることなく後続をグングン突き放し、終わってみれば9馬身差の大楽勝。タイムも1.34.6と優秀なものだったから、この勝利でオーシャンヒーローは一気に注目を浴びる存在になったんだ。
凄い圧勝ですね。
なんてったって、2010年以降マイル以上の距離の新馬戦で2着馬に1.3秒差以上つけて勝った馬はこの馬を含めてたった7頭しかいないからね。
この勝利はそれ以外の意味もあって同じ月の上旬には同父のモーリスが差し切りで3馬身差の快勝でデビュー勝ちを上げていたから、この2頭の勝ちっぷりを見て「もしかしてスクリーンヒーローってすごい種牡馬なのでは」という雰囲気になったんだよ。
現に、スクリーンヒーローの種付け数は2013年の80頭からこの2頭がデビューした翌年には111頭の30頭以上も増えたからね。
館山さん自身はどう思われたんですか?
この頃の競馬は、………、と言うか今もそうだけど、上がり重視でスローペースになることが多かったから、こういう「気っ風のいい逃げ馬」でしかも「力のある馬」の登場はワクワクさせるものがあったよ。イメージとしてはカレンブラックヒルかそれを超える馬になってほしいなという感じ。正直、この時点で「(当時は中山で行われていた)朝日杯の◎は決まったな」と思ったよ。
でも、この後スクリーンヒーローは結局この1勝で終わるんですよね。その後何があったんですか?
大一番を前にまさかの…。長い沈黙期間
その後、オーシャンヒーローは黄菊賞(芝1800m)に出走するんだけど、厳しいレースをした後中1週でのレースだったから、そのローテは物議をかもしたよ。
このレースは他にも、トゥザヴィクトリーの子トゥザワールド、ダンスインザムードの子シャドウダンサー、スティンガーの子キングズオブザサン、リルダヴァルの弟でおじにディープインパクトがいるヴォルシェーヴなどクラシックを狙う良血馬が多数参戦してきたんだけど、そんな並み居る強敵を抑えてオーシャンヒーローは1番人気に支持されたんだ。
それだけの良血馬の中で1番人気になる。それだけデビュー戦の評価が高かったわけですね。
レースはデビュー戦と同様に半マイル46.4秒という緩みのないペースで逃げて、直線半ば残り200m手前までは戦闘で頑張っていたんだけれど、最後のひと踏ん張りが効かず、3着に敗れてしまった。ただ、それでも俺っちの評価は下がらなくて、「距離も直線も短くなり、パワー型の馬場になる中山なら勝てる可能性は高いだろうな。」と思ってたから、逆に「これで人気が落ちてくれるならありがたいな。」くらいに思ってたよ。
その朝日杯はどうなったんですか?
それがレースの一週間前追い切りの際に故障、屈腱炎が判明して、出走できなくなってしまったんだ。この時は本当にがっかりしたよ。
そのケガが元でオーシャンヒーローは長期休養を余儀なくされてしまうんだよ。
1年10か月の休養を経て復帰。しかし…
その後、1年10か月もの間、彼はレースに出られなかった、俺っちもしばらくその存在を忘れていたけど、馬柱にその名前を見つけた時は興奮したね。
あと、これは俺っちがTwitterを始めてから知ったんだけど、復帰前のTwitterには、
「オーシャンヒーローが帰厩したらしいぞ。」
「オーシャンヒーローが時計を出したぞ。」
「オーシャンヒーローが来週のレースに出るらしいぞ。」
というtweetがいくつかあるんだよね。
それくらい、あのデビュー戦を見た人にとってオーシャンヒーローはまさに「ヒーロー」を予感させる存在だったんだ。
それはすごいですね。で、復帰戦はどうなったんですか?
あぁ、復帰戦は足元を考慮してダートでの出走。1年10か月ぶりのレースだったにもかかわらず、一時は一番人気になるなど期待を集めていたんだ。(最終オッズでは3番人気)
レースは、序盤から好位につけるレースをしていたけれど、3角あたりから息が切れて後退。最終的にはしんがり負けだったんだ。
その後、2戦するも良い結果は得られず、屈腱炎を再発し引退することになったんだ。
やっぱり休養期間が長すぎたんですかね?
そうかもね。でも俺っちは、あのまま走り続けていればいつかは復調したんじゃないかという気もするし、競馬にたらればはご法度だけど「ケガさえなければ」と思わずにはいられない馬だった。無事だったら、きっと、モーリス、ゴールドアクターとともに「スクリーンヒーロー御三家」を形成していたんじゃないかと思うよ。
現に、今でも「無事だったらどこまでの馬になったのか」とか「せめて種牡馬にしてやることは出来んかったか」というtweetを目にするくらい将来を嘱望されていたんだ。
「期待されながら花開くことが出来なかった」例は無数に存在する
こう見ると、「もう少しどこかで歯車が上手く回っていれば」と思わざるを得ないですね。
そうだね。でもそんな例は、競馬にはいくらでも転がっているんだよ。
現に今年のニュースの中でも、ワグネリアンの新馬戦で2着になり、その後未勝利戦を大楽勝したヘンリーバローズがその後一度も走ることなく引退したり、新馬戦を快勝したブルトガングが、病によって2歳にしてこの世を去ったりと、「無事であればどれだけの活躍をしたんだろう」と思わせることがあったしね。
だから、競馬ファンには「たらればの話をするんじゃねぇ」と言われるかもしれないけれど、こういう馬について語り継いでいってほしいなと思うよ。
そうすることで、ありきたりな言葉だけど、「競馬」についてもっと深く知ることが出来るんじゃないかなと思うよ。
なるほど……。「みんなが知っている名馬」だけじゃなくて「世間的には日の目を見なかったけどすごい馬」というのはきっとたくさんいるんでしょうね。
そういう馬について、このブログでもっと語って行ければいいなと思うよ。
実際、俺っちの大好きなアグネスタキオン産駒でも、ダイワカンパニー、ヴォードヴィリアン、ディープデザイア、タイダルベイスンあたりは無事だったら……、
あぁ、もうこの馬たちについて語りたくなってきた、今晩は徹夜でこの馬たちについて語るから、晴香ちゃんも付き合ってね。
ひゃぁ~、さすがにそれは勘弁してください。
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