勝利への強い意志~思い出の有馬記念・差し切り編~

こんちわ~す。館山速人で~す。

アシスタントの大澄晴香です。有馬記念直前シリーズ『思い出の有馬記念』も今日で3日目ですね。今日はどんなレースを紹介してくれるんですか?

今日は昨日紹介した1999年の有馬記念の3着馬テイエムオペラオーが勝った2000年の有馬記念について書いていくよ。

2000年と言えば、テイエムオペラオーが8戦8勝。春秋の天皇賞と宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念を全て制した年ですよね。これまでに勝てた要因はどういう所にあったんでしょう。

これと言った弱点がなくて総合的な能力の高さがあったんだろうけど、特に「勝負根性」が素晴らしかった。

「勝負根性」という事は競り合いに強かったってことですか。

それもあるけどこの馬に関しては「勝利への強い意志」を感じるときがあったんだよね。特にこの有馬記念はその真骨頂ともいえるレースだったんだよ。

テイエムは来ないのか!テイエムは来ないのか!……テイエム来た!テイエム来た!

この年のテイエムオペラオーは、前年G1でイマイチ勝ち切れなかったのが嘘のように勝ちまくり。

2月の京都記念を皮切りに、阪神大賞典、天皇賞(春)、宝塚記念、京都大賞典、天皇賞(秋)、ジャパンカップと古馬の主要G1、G2を負けなしで7連勝。有馬記念には前人未到の「古馬中・長距離G1完全制覇」がかかっていたんだ。

そこまで勝っちゃうと他の馬のマークも厳しくなりそうですね。

そうだね。この有馬記念では、有力馬は皆テイエムオペラオーの動向に注視し、それをマークする形でレースを進めることが考えられた。小回りで直線の短い中山コースでは一瞬の判断ミスが命取りになりかねない競馬場。一筋縄ではいかないことが予想された。

レースではその懸念が現実のものとなる。スタート直後はある程度前の位置取りを取ることが出来たものの、1周目の3コーナー、4コーナーで厳しいマークにあい、馬体をぶつけられる形で位置取りを下げてしまう。

結局、最初のスタンド前に来た時には後ろから3番手と言う位置取りになった。

さらに悪いことに、戦前は逃げると予想されていたホットシークレットが出遅れたことにより、ペースが上がらず馬群が密集したままレースが進みポジションを上げるに上げられない状況が続いた。

向こう正面中ごろから徐々にペースが激流に変わっていき、各馬が早め早めに仕掛ける中、和田竜二騎手も手綱を緩めテイエムオペラオーを促していく。

しかし、テイエムオペラオーの手応えは良く映らない。バテているわけではないが、追走するのがやっとという感じ。

フジテレビの堺アナの実況「和田がグイグイグイグイ押している」というのは、手応えの悪さを感じ取ってのものだろう。

「残り310mしかありません!」

直線を向いた時、テイエムオペラオーの位置取りは馬群の一番後ろ。しかも周りを囲まれた状態で、この時点で俺っちは完全に「負けた」思ったし、きっと多くの人がそう思っただろう。

「テイエムは来ないのか!テイエムは来ないのか!」

実況が叫ぶ中、間を割ってくる栗毛の馬体。テイエムオペラオーだ!

1頭分しか入れないような隙間、僅かな時間しか空かなかったであろうスペースに入り込んでグングングングン伸びてきたのだ。

「テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!テイエム来た!抜け出すか!メイショウドトウと!テイエム!テイエム!テイエムかーテイエムかーわずかにテイエムかー!!」

観客の驚嘆を代弁するかのような実況。そのままテイエムオペラオーはメイショウドトウとの叩き合いを制し、ついに「年間無敗」「古馬中長距離G1完全制覇」を成し遂げた。

あの絶望的な位置から差し切ってしまうのは凄いですね。

正直このレースは何度見返しても鳥肌が立つよ。

よく「勝負根性」って言葉を使うけど、それって大抵は「競り合いに強い」とかそういう意味で使われるのが一般的なんだ。

けど、この時のテイエムオペラオーは、馬自身が「勝つんだ」という強い意志を持ってレースをしているように感じた。だからこそあんなところから差し切れたんだと思う。それはもしかしたら本当の意味での「勝負根性」かもしれないね。