奇跡の復活~08年ジャパンカップダート~

こんちわ~す。館山速人で~す。

アシスタントの大澄晴香です。本日は水曜日恒例の「過去の名馬シリーズ」です。今日はどの馬、どのレースを紹介して頂けるのでしょうか?

今日紹介するのは08年のジャパンカップダート、そしてその勝者カネヒキリについて紹介していくよ!

「砂のディープインパクト」と称されたダートの新星

カネヒキリは2014年の新潟2歳新馬でデビュー。芝を2戦使われて4着、11着という成績だったんだ。

なんか頼りない成績ですね。そんな馬が本当に名馬になるんですか?

まぁ、この時はほとんどの人が「とるに足りない馬」と思っていただろうね。11着と敗れたレースの後、カネヒキリは半年近い休養に入り、復帰は翌年2月のダート1800m戦。ここでダートを走ったことが彼の運命を大きく変えることになった。

このレース2番手からレースを進めたカネヒキリは4角手前で先頭に立つと、直線はドンドン後続を引き離していき7馬身差の圧勝。タイムの1.53.3は当時の良馬場ダート1800mの3歳未勝利戦としては破格の好タイム。彼のダート馬としての才能が垣間見える結果になった。

この後カネヒキリは、芝に再挑戦した毎日杯(7着)を除くと、500万→端午S→ユニコーンS→ジャパンダートダービー→ダービーグランプリと負けなしの快進撃。ユニコーンS以外は2着馬に2馬身以上の差をつける快勝だった。

この頃からカネヒキリは、既にスター街道を登っていた、同期で同馬主の名馬になぞらえてこう呼ばれるようになっていた。

砂のディープインパクト

と。

う~ん…………。

どうしたの?晴香ちゃん?

「砂の○○」とかって呼び方、どうなんですかね?ましてや○○の中に入るのは同期の馬なわけでしょう?私だったら何となく悔しい感じがすると思います。

なるほどね。確かにそうかもしれないね。お馬さんはそんなこと考えもしないだろうけど、もしカネヒキリ自身がそれを理解していたら、内心忸怩たる思いがこみ上げていたかもしれないね。

順調に現役ダートチャンピオンに上り詰めるも……

そんな感じで3歳春を駆け抜けたカネヒキリは、秋の初戦を武蔵野Sで迎えた。レースは同じ3歳のサンライズバッカスに敗れはしたものの、いわゆる「古馬の壁」は感じさせず、その力量を示したレースともなった。

続くジャパンカップダートでは、スターキングマン、シーキングザダイヤとの日の出るようなたたき合いを制し、初めての中央G1のタイトルをゲット。

着差はハナ差しかなかったが、4コーナーで外々を周らされるというロスの多い競馬をしたことを考えると、着差以上に濃い内容と感じるレースだった。

それを証明するように年明けフェブラリーSでは、直線まで中段で脚を溜めると、直線は末脚を爆発させて3馬身差の快勝。押しも押されもせぬダート界のチャンピオンとなった。

対古馬戦で結果を出したのはディープインパクトよりも先だったんですね。

そう言うことになるね。

その後はドバイ遠征を敢行し、ここで繰り上がり4着と着順だけ見るとまずまずの結果を残す。帰国初戦の帝王賞は2着に敗れたものの、誰もが「これからのダート界を背負っていくのはこの馬だ」と思っていたんだ。

しかし、好事魔多し。秋の復帰を見据えて調教を行っていたカネヒキリに屈腱炎が見つかった。

2年にわたる休養。それでもカネヒキリは復帰を目指した

屈腱炎はその再発率の高さから競走馬にとっては「不治の病」とも言われていて、それが原因で引退に追い込まれた馬は数多くいた。それでもカネヒキリは現役を続ける道を選んだ。

それだけ期待されていたんでしょうか?

それもあるだろうけど、やっぱり種牡馬入りしてからのことも考えられたんだと思う。

当時は、サンデーサイレンスの血を引く種牡馬が入り乱れていた時代で、種牡馬入りとなるとアグネスタキオン、スペシャルウィーク、マンハッタンカフェそして、同期のディープインパクトあたりと競争を強いられることになる状況。

そんな中でダートでしか実績のないカネヒキリが種牡馬として生き残っていくためには、今の実績では心もとないという懸念もあったんじゃないかと思う。

かくして、カネヒキリは復帰への道を歩むことになる。1年後の9月にいったん帰厩し調教を再開するも、屈腱炎を再発。そこで陣営は当時の最先端技術ではあったものの実証例のなかった幹細胞移植手術を受けて治療。

そこからさらに1年、帝王賞から2年4カ月が経った2008年の11月、武蔵野Sで復帰したんだ。

復帰戦はどうだったんですか?

復帰初戦の武蔵野Sは直線で包まれて最後まで追えないまま9着に敗れたんだけど、前さえ開けば勝つまでは行かなくとも、伸びてくる気配はあったし、能力の片鱗を見せたレースでもあった。

続くジャパンカップダートでは、多くのファンがそう感じ取ったのか、あるいはその絶対能力の高さを信頼したのか、4番人気と長期休養明け2戦目とは思えないくらい上位の人気に推される。

そのレースの上位人気馬はどんな馬だったんですか?

1番人気はヴァーミリアン。カネヒキリと同期で、3歳時はクラシック路線を走っていたんだけど、秋からダートに転向すると、カネヒキリが休養している5歳になって本格化。交流G1を6勝する大活躍で、G17勝目をかけてジャパンカップダートに臨んでいた。

2番人気、3番人気はサクセスブロッケン、カジノドライヴという3歳馬2頭。サクセスブロッケンはその年のジャパンカップダート勝ち馬でダートでは連を外したことがなく底を見せていない馬だったし、カジノドライヴは兄にベルモントS勝ちのジャミル、姉に同じくベルモントSを勝ち、ケンタッキーオークスも制したラグズトゥリッチズがいる良血馬で、その年のBCクラシックにも挑戦した期待馬だったんだ。

レースはアメリカのティンカップチャリスが先手を主張、2番画にサクセスブロッケンが続く展開で、カネヒキリは好位の内でそれを見る展開。

3角手前でサクセスブロッケンが先頭に立つと、フリオーソ、カジノドライヴ、ヴァーミリアン、メイショウトウコンあたりが一気に外を押し上げていく展開になり、レースはまくり合戦の様相を呈してきた。それでもカネヒキリは内目でじっと気を伺っていたんだ。

4コーナーでティンカップチャリスが1頭分だけ外に膨らんだのを見るや否や、ルメールはその出来たスペースにカネヒキリを誘導。カネヒキリの視界が一気に開けた。

そしてカネヒキリはその機を見逃さずにスパート!直線半ばで先頭に立つと、外から襲い掛かってくるメイショウトウコン、ヴァーミリアン、サンライズバッカスの追撃を根性でしのぎきり、復活のG1勝利をおさめたんだ。

その勝ち方は、機が熟すまでじっと耐え、チャンスが来たらそれを逃さず、根性で耐えきるという、まるでカネヒキリの復活劇を象徴するような勝ち方だったと思うよ。

このレースだけでは終わらない。カネヒキリの物語

とまぁ、並の物語であればここが大団円という事なんだろうけど、カネヒキリの物語はまだ終わらない。

この後、東京大賞典、川崎記念と立て続けに勝利し、G1を3連勝!

「ただ復帰した」だけでなく、王者として戦いの最前線に立ち続けたんだ。

その闘志はかしわ記念後に骨折が判明した時も消えることはなく、翌年に復帰するとマーキュリーCを勝利し健在をアピール。その年のブリーダーズGC2着後に故障が判明した時はさすがに引退することになったけど、屈腱炎の復帰後も武蔵野S以外はすべて馬券圏内という好走を見せるなど活躍を見せたんだ。

ダイワメジャーの時も感じましたけど、競走馬の生命力と言うかたくましさを感じますね。

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